花人 村上仁美(ulmus):花には水、人には愛。神様が宿る木「ハルニレ」に咲く花のような花人(はなひと)
花人 村上仁美。
「花を通して人と人をつなぐ」。
花 人(はなひと)という呼称にはそんな想いが込められているという。
総じて「花」と言われるものは、植物が成長して綺麗な花びらを付けたもの、のみをイメージし着目してしまうが、彼女の作品はそれだけに止まらない。
生花店に勤務しながら「花」を生業とする方法や可能性について模索しながら彼女は「店舗を持たない」というスタイルで、花人としての活動をスタートさせた。
花が求められる場所は主に「ハレとケ」の「ハレ」に寄り添うものが多く、結婚式など様々な空間の演出を任されることが少なくないが、それに止まらず日々の暮らし、つまり「ケ」の中にある様々な植物にもその魅力を見出し、昨今は「稲藁」を作ったお飾りの制作や、野に咲く植物の自然な姿をいかして器に生ける“なげいれ”のワークショップが人気を博している。
そもそも花には土と水が必要だ、そんな当たり前のことを思い出させるプリミティブな力が彼女の作品からは感じられる、むしろ哲学と言ってもいいのかもしれない。
かつて作家の水上勉が「土喰う人々」というエッセイで”香ばしい土の匂いを忘れてしまった日本人の食生活の荒廃”を嘆いたことがあったが、彼女の作品も「花びら」にばかり気を取られ自然との乖離が生まれている私にそんなメッセージを投げかけてくるようだ。
村上さんは2023年に縁あって北大植物園近くの広い通り沿いにお店を構えることとなる。
店名は「ulmus(ウルムス)」。
これは彼女の好きな”ハルニレ”の学名から名付けられたという。
偶然にもお店の周辺にはハルニエが好む水源の痕跡がたくさんあるというのも、彼女の哲学による引き寄せがあったのではないかと思わずにはいられない。
小春日和のある日訪れた店内。
そこには優しい陽の光りがたっぷりと溢れ、カラフルな花々、蕾が膨らみがいまにも解けて香りを放ちそうな枝、そして積まれ稲藁、耳をすませばどこか土くさい民族音楽が聞こえてくる。
オーディオ装置にもちょっとしたこだわりが感じられ話を聞いてゆくと、実は音楽家を目指していた時代がありピアノとオーボエを嗜むという。
村上さんの魅力の奥深さやその引き出しの多さはまだまだ未知数、壁に無造作にかけられた「鮭とば」にもきっと何か「企み」があるのかもしれない。
写真撮影:須田守政
文:アヤコフスキー(橋本亜矢)
場所:札幌市中央区北3条西12丁目2-1 札幌パークマンション1階
営業日は営業時間は、ulmusのインスタグラムよりご確認ください。