350kmの旅の目的は器?そうめん?本?弟子屈の『器とその周辺 山椒』

350kmの旅の目的は器?そうめん?本?弟子屈の『器とその周辺 山椒』

弟子屈の『器とその周辺 山椒』

山椒の幅広い活動や品揃いを、なんとも上手に表現している店名に脱帽してしまう。

扱いは陶器・磁器・漆器・ガラス製品・竹製品・食材と様々、そして毎月期間限定でオープンするそうめん食堂『いりこ』、『本とリトルプレス 丸干』と活動も多岐にわたる。

”その周辺”の幅や奥行き、そしてその深さに、いつも驚かされる。

東京に住んでいた時、神田の書店で手に取ったのが、「East Side」という雑誌だった。
観光スポットを紹介するわけでもなく、そこで生活する人の暮らしを描いた骨太の内容に、オホーツク沿岸の小さな村で育った私は、にやりと笑みをこぼしてしまった。
まるで東京に一矢を刺したような気分。

また、札幌で通っていたBar(雨ふり)で食べたチョコケーキがあまりに美味しく、その作り手が弟子屈の店だと知り、車を走らせた懐かしい思い出。

後に知ることになるのが、そのEast Sideの編集者の森末忍氏と弟子屈の店のドアを開けた北原康代氏がご夫婦であるという事実。
それから、山椒ワールドに魅了され、今に至る。

北原さんは、自身が扱う作品の作家さんへの愛情が深い。
道東のこの地になんでこの方の作品が?と驚くばかりだが、研ぎすまされた空間に佇む作品を見ていると、なんとも似つかわしく、幸せそうだ。
連れて帰るときには、大事にしようと心に刻み、札幌の帰路につく。


その空間で、吟味された器で提供される、そうめん食堂『いりこ』の料理は格別である。

北原さんが提供する料理は、滋味深く、美しく、温かみがある。

季節により、食材・調理法・器も変わり、そうめんも色々な姿に変貌する。

食後、暖かい季節には、少し歩いて『本とリトルプレス 丸干』へ。

森末さんのセレクトした古本、新書・リトルプレスを眺め、食の興奮を抑えるのだ。

壁には、あの『北海道と京都 その界隈』も。

このリトルプレスの話は長くなるので、また別の機会に。

ただ一つ、”その界隈”には、また広い世界が存在している。

350kmの旅の目的は、器、そうめん、本。

そう自信をもって言える場所があるのは、私の人生にとって有難い。